前回の記事にて、近畿日本鉄道(近鉄)で4月1日から拡大される障害者割引を紹介しました。
しかし、実は障害者割引は他社でも行われています。
今回は実際に行われている障害者割引の中から、精神障害者保健福祉手帳でも割引が適用できる例を一部紹介します。
基本ルール
障害者割引を利用するにあたって、以下のルールを守る必要があります。
- 精神障害者の手帳には有効期限があります(2年間)
障害者手帳の有効期限内でないと割引は受けられません。 - 障害者手帳に顔写真を貼っていない場合は割引は受けられません。
本人であるかの証明ができないためです。必ず貼ってください。 - 障害者手帳をコピーして使うことはできません。
必ず原本を持参してください。 - 係員からの求めがあったときは、直ちに障害者手帳を見せられるようにしてください。
- 以下の示す事例はほんの一部です。また情報が間違っている場合があります。
障害者割引を利用する前に事前にホームページでよく調べてください。
公共交通
実は公共交通での障害者割引は、精神障害者と身体・知的障害者とで異なっているのが実情で、おそらくほかのどの例よりも格差の激しいものとなっています。
障害者団体は差別であるとして制度を統一してほしいと訴えています。
実際に国も各交通機関に要請をしているようですが、一方で障害者割引の格差は差別に当たらないとしているほか、何らかの補助制度の検討を行わないなど、なんだかちぐはぐな対応です。
では、精神障害者に対して何も行っていないのかといえば、そうではありません。
実際の例を見てみましょう。
鉄道
大手私鉄では、西日本鉄道(西鉄)と近畿日本鉄道(近鉄)のみで、そのほかの大手私鉄とJR全社は行っていません。
近鉄の例は以前の記事の通りですが、西鉄の場合は距離制限がないことが近鉄とは異なっております。
そのほかの中小私鉄・第三セクターでは精神障害者への割引を行っている例はまちまちで、ここ最近では、JRから経営分離された第三セクター会社で精神障害者への割引を行っているケースがあります。
例として、北陸新幹線の開業と同時に第三セクター化されたIRいしかわ鉄道・あいの風とやま鉄道・えちごトキめき鉄道では、開業と同時に精神障害者への割引を行っています。
地元自治体が第三セクターへの出資を行っていることから、自治体からの要望が通りやすいです。
ただ割引内容が微妙に異なっていますので、よく確認するようにしてください。
バス
バスの場合、一般路線バスでは障害者割引を行っているケースが多いです。
もっとも、割引対象や対応地域が限定されている場合もあります。
特に、東京都内のバス会社での精神障害者の割引は東京都発行の障害者手帳でないと割引されず、隣接する神奈川県はごく限られた地域でしか精神障害者の割引を行っていません。同じく隣接する埼玉県・千葉県ではそのような限定はないようです。
また、高速バスではほとんど割引がありません。
特に夜行高速バスについてはほぼ存在しない状態です。
ただ、地域限定で見た場合、九州では先述の西鉄が絡む路線では精神障害者への割引が行われているようです。
また、定期観光バスでは、はとバスが一部路線で障害者割引を行っています。
そもそも定期観光バスで障害者割引の制度自体を設けている例は非常に少ないです。
船舶
フェリーや観光船・渡し舟などは比較的割引が行われているようですが、一部の等級に限定されたり、予約方法が異なっていたりとあまり使い勝手がいいとは言えません。また、飛鳥Ⅱやぱしふぃっくびいなすなどのクルーズ船には障害者割引自体がありません。
実際、横須賀港(神奈川県横須賀市)と新門司港(福岡県北九州市)を結ぶ東京九州フェリーの例では、制度自体は精神障害者への割引が身体・知的障害者と同じですが、予約方法が異なっていて、精神障害者のみ窓口か電話での予約のみとなっています。
これは精神障害者手帳に有効期限が設けられていて、その範囲内かを確認するためにわざと行っているのではないかと思います。
一方、大洗港(茨城県東茨城郡大洗町)と苫小牧港(北海道苫小牧市)を結ぶ商船三井フェリーは客室の等級・手帳の種類・等級を問わず割引され、予約方法も統一されています。ただ、インターネット予約が対応しているかわかりませんので電話での予約が無難です。
観光船や渡し舟など、予約を必要としない場合は発見窓口か乗船窓口での購入時に手帳を見せると割引されます。
航空
航空路線では、国内線のみ障害者割引があります。
かつては精神障害者は割引の対象外でしたが、国の働きかけによりLCC以外の各社に広がりました。
マイレージサービスの会員であれば入会時や予約時で障害者に関する情報を提供すると、次回予約時にはマイレージカードのみを見せるだけで予約可能になることもあります。マイレージもたまります。
割引内容については各路線・期間で異なっているうえ、ANA SUPER VALUEやスペシャルセイバー(JAL)などの早期購入割引の方が割引率が高いです。
一方、早期購入割引には販売座席数の制限・繁忙期での割引率の低さ・キャンセルや予約変更不可・マイレージ加算率の低さなどの欠点がありますが、障害者割引にはこうした制限はありません。
なおLCCに関しては障害者割引そのものがありません。
そもそも低運賃で運航するために、余計なサービスを付けない・手荷物・機内食や飲料を一部有料にするなどを行っているため、障害者割引とはあまり相性がよくありません。
その他
タクシーでは一部の地域・会社で精神障害者に1割引きが適用されます。
ただ、障害者割引の情報が掲載されてないか、あっても不十分なので、運転手さんに確認が必要です。
また、ケーブルカー・ロープウェイなども割引されます。
ただ、割引されるのは山腹ー山頂間のみとなるケースが多く、そのほかの区間についてはそもそも障害者割引制度自体がなかったりすることもあります。
レンタカーについては、現状のところ日産レンタカーのみが精神障害者の割引を行っています。
トヨタレンタカーやニッポンレンタカーについては現在のところ身体・知的障害者のみとなっています。
JAFへの入会の際には入会金は無料になりますが、年会費の割引はありません。
高速道路・有料道路については割引はありません。NEXCO各社が明確にホームページで「国からの助成がないと難しい」としています。
身体・知的障害者には障害者割引制度があるので主張とはかなり矛盾が生じています。
水族館・動物園・博物館・美術館・科学館
公共交通とは違い、障害の種類を問わず割引されることがあり、特に公営の施設では無料になることがあります。
水族館・動物園
名古屋港水族館・上野動物園等の公営の水族館や動物園は、障害者が無料になることが多いです。
特に名古屋港水族館の場合は、通常の入館料が2,030円と高額であるにもかかわらず、障害者は無料となっており、破格な割引制度となっております。
一方、海遊館・長崎バイオパークなどの民営の水族館や動物園の場合は半額になることが多いです。
博物館・美術館
東京国立博物館・国立西洋美術館など公営の博物館・美術館については水族館・動物園と同様、無料になることが多いです。
一方、SOMPO美術館・トヨタ博物館など民営の博物館・美術館では、水族館・動物園とは異なり、障害者は無料となるところ半額になるところが混在しています。ちなみに、同じトヨタグループで運営している
ちなみに、同じトヨタグループが運営している以下の2施設では、障害者が無料になったり半額になったりと案外ちぐはぐです。
科学館
科学館では日本科学未来館や名古屋市科学館等の公営の科学館では、障害者は無料になることが多いです。
一方、民営の科学館は探すのは難しいほど施設自体が少なく、リニア・鉄道館など特定の分野に特化した施設であれば多く存在しますが、多くは半額です。
そのほか
プラネタリウムは、科学館に併設されている場合はその制度が適用されることが多いです。
単独施設の場合は、無料になったり割引になったりとまちまちです。
そのほか、お城や宗教施設(神社や寺)なども、無料になるケースと半額になるケースがまちまちです。
なお神社に関しては、一部施設(宝物殿など博物館に相当する施設)が有料となっているだけです。
レジャー施設・スポーツ施設・公園
レジャー施設も障害の種類を問わず割引されることがあります。公営の施設では無料になることがあります。
遊園地・テーマパーク
通常、多くの遊園地やテーマパークは民営の施設が多いため、無料になるケースあまり多くありません。
そのため、多くの施設では特別料金となる場合が多いです。
いっぽう、規模が大きい場合は関連施設が充実していて、その施設でも割引制度があります。
公営の施設としては以下のように無料になっているところがあります。
例外として、本人ではなく同伴者が割引または無料になるケースがあります。
また、これまで割引制度自体がなかった東京ディズニーリゾートでは、2021年10月の料金改定に際して障害者割引制度が導入されました。
スポーツ施設
プールや体育館などは公営の施設は無料または割引がありますが、民営の施設ではそもそも障害者割引がなかったりすることがあります。
また公営の施設であっても、運営している自治体の住民にしか割引されないことが多いです。
公園・植物園
国営公園や自治体の運営する公園や植物園などは障害者は無料の施設が多いです。
ただし、民営の施設の場合は障害者割引の制度があったりまちまちです。
映画館・劇場
映画館では、全国ほぼすべての施設で障害者割引があります。
また、劇場についてはごく一部の施設を除き障害者割引があります。ただし、一部の席が割引の対象外になっている場合があるので注意が必要です。
カラオケ・ボウリング
「何故そんなところにまで割引があるのか」と言いたくなるものとしてはカラオケとボウリングがあります。
割引率は決して高くはないですが、カラオケ好きにはうれしい制度です。
展望施設・その他
東京スカイツリーや全国の灯台では障害者割引を行っています。
観覧車なども割引を行っています。
またゴルフ場では、税金(ゴルフ場利用税)が課せられることがありますが、障害者の場合はこれが免除される場合があります。
また一部のゴルフ場では、利用料金が割引されることがあります。
温泉・宿泊施設
意外かもしれませんが、障害者割引を行っている施設がごくまれに存在します。
宿泊施設
宿泊施設では、休暇村や一部の国民宿舎で行っています。
ただし割引額は小さく、あまり役に立たないかもしれません。
一方東京都民の場合、「障害者休養ホーム事業」があり、年間2泊までという条件付きながら、1泊につき最高6,490円割引されます。
そのほか、自治体が運営する宿泊施設でも、運営している自治体の住民であれば割引されることがあります。
温泉
温泉施設では、割引率は低いですが障害者割引を行っている例があります。
また、宿泊施設でも日帰り入浴できる温泉施設ではごくまれにですが障害者割引を行っている場合があります。
サービス・イベント
障害者の割引を行っているのは、何も施設だけではありません。イベントや通信料の割引を行っている場合をごく一部ですが紹介します。
イベント
野球やサッカーのスポーツ観戦や展覧会などのイベントの割引は多くあります。
また、展覧会では、東京モーターショーなどのでは、障害者が無料になるうえ、障害者のために先行で見学できる日が設定されているほどです。
(以下のリンクは2019年の時のものです)
通信サービス
通信サービスで特に目立つのは携帯電話の割引です。
大手三社(DoCoMo・au・Softbank)はいずれも割引制度がありますが、割引率は低くなっています。
以前は携帯料金が高かったがために割引率は大きかったですが、政府主導で携帯電話料金の値下げが半ば強制的に行われた結果、割引率が低下した経緯がありますので、全体的には安くなっていると思います。
最も、割引は基本料と通話料だけとなっていますので、通信料については割引対象外です。
有線(光・CATV)の通信料・ケーブルテレビについては、現状ではJ:COMのハートフルプランのみで、精神障害者では1級のみ対象です。
有線では障害者割引がないのになぜスマホだけ割引があるのか、正直よくわかりません。
NHK受信料
公共料金のうち、NHK受信料については条件が厳しいですが障害者割引制度があります。
公的機関が国民から受信料を徴収して非営利で行っている放送局としてこれでいいのかと思ってしまうような割引制度で、ここは思い切って障害者は全額免除にしてほしいと思います。
そのほか
サーカスのように各地を移動して行うショーでも一部ですが障害者割引があります。
また、これも「何故そんなところにまで割引があるのか」と言いたくなるものの一つですが、パソコン購入時の障害者割引制度があります。
現状では@Sycom(サイコム)のみです。おそらく他社には広がらないと思います。
やはり、公共交通の差別的な取り扱いは異常!
以上、障害者割引の一例を紹介しましたが、やはりどう見ても公共交通の障害者割引の差別的な取り扱いがあまりにも目立ってしまいます。
他の業種では障害の種別にかかわらず障害者割引を行っているにもかかわらず、「行政の支援がないから」と言って差別的な取り扱いを是正しようとしていない点はかなり違和感があります。
実際、通信やパソコン購入など障害者割引を導入しなくてもいい業種が、身銭を切って行っているにもかかわらず、その例を参考にすらせず「国のせい」と言わんばかりに放置するのは、働いていない人が8割を占める障害者としては全く受け入れないものです。
一刻も早く、差別的な取り扱いを是正して障害者割引の統一を実現してほしいものです。